長野県佐久市のチーズ工房「ボスケソ」。
元エンジニアの店主が奏でるチーズは、「御牧(みまき)」に紡がれてきた歴史を存分に引き出す味わいです。

2018年2月23日

グルメ探訪

佐久で作る理想のチーズ 「BOSQUESO」のナチュラルチーズ 「佐久でしか、理想のチーズは作れません。チーズで地域を笑顔にしたい」(是本さん)佐久で作る理想のチーズ 「BOSQUESO」のナチュラルチーズ 「佐久でしか、理想のチーズは作れません。チーズで地域を笑顔にしたい」(是本さん)

 大手自動車メーカーの元エンジニアにして、出身は九州・福岡県。そんな是本健介さんが、長野県佐久市にチーズ工房「ボスケソ」を構えたのは、2016年末。人の縁に導かれた「自然な決断」だったといいます。「妻の祖母の住まいが空き家だったこともあり、10年ほど前から週末や長期休暇を利用して通っていました。豊かな自然と美味しい農産物、それに良質な乳を提供してくれる小林牧場さんをはじめ、プロフェッショナルな仲間たち。理想とするチーズは、この場所でしか作れない!と決めました」(是本さん)。
 そもそも是本さんがチーズの魅力に惹き込まれたのは、15年ほど前のこと。「当初は食べる専門でしたが、エンジニア魂に火がつき(笑)、チーズプロフェッショナルの資格を取得。自宅で作るようにもなりました」。


チーズ作りと
自動車開発はよく似ています

 チーズ作りと自動車の開発はとても似ているそう。
 「自動車開発では、最終的なアウトプットに向けて、入力条件(パラメータ)を変更しながら計測を繰り返します。実はチーズも同じで、科学的な営みなんです。まず、どんなチーズを作りたいのか、具体的にイメージし、ゴールに向けて調整・計測を繰り返しながら作ります。質が一定の工業製品の自動車とは違い、チーズの原料は天候や、牛の体調で乳質が変わり、菌の配合や時間、湿度・温度管理の微調整が必要となるため、チーズ作りのほうが難しいかもしれません」(是本さん)。

「御牧」の歴史を紡ぐ「MIMAKI」チーズ
 「チーズは、非常に奥深く、包容力の高い食材です。実は、日本酒や和食にも相性のよいチーズも人気なんです。先入観や知識にとらわれることなく、直感的にチーズを楽しんでほしい」と、是本さんははにかみます。
 とりわけ自信作なのが、「MIMAKI」。その由来は、千曲川に囲まれた御牧地域によるもの。「御牧には、平安時代にチーズに似た食材蘇≠朝廷に献上していた歴史があって。これは酵母を熟成したソフトタイプで、清涼感のあるスパークリングワインや、香り豊かな純米大吟醸とも相性抜群。徐々に酸味がやわらいでいくので、3週間もすれば、旨みがもっと凝縮します」。


チーズを、もっと直感的に楽しんでほしい
 誠心誠意、チーズ作りに向き合う是本さん。チーズの味わいもさることながら、その柔和な人柄からか、多くの仲間が周囲に集います。「佐久地域には、酪農や農業、13もの酒蔵、クラフトビール、イタリアン、フレンチや日本食のレストラン、パン屋など、さまざまなプロフェッショナルがいます。うちのチーズを起点に彼らを結び付けられれば、もっと豊かな食文化、産業が育つと信じています。美味しさで、この地域を笑顔にしていきたいですね」。